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2014
12.13

かまかん

Category: 未分類
2人で並ぶと身長の差が目立った。手を繋げば少し親子のようにも写った。
ショッピングモールへ来たかまぼことかんきつは、エントランスに飾られた大きなクリスマスツリーを見上げる。
赤い球体のオーナメントに、湾曲した自分の顔が映っていた。
「もうこんな時期なんですね、はやーい」
繋いだ指先をほどき、かんきつはツリーをしげしげと見つめて言った。「わっすごい、かまぼこ見てくださいこのクッキー本物です」「へぇ、そりゃ…」カビちゃうね、とロマンもへったくれもないことを言おうとしたかまぼこが押し黙る。
楽しそうに目をキラキラさせているかんきつに水を指す気にはなれなかった。
そうだ、かんきつはまだ自分よりずっと、子どもなんだ。

かんきつの指がまたかまぼこの指を絡め取る。
「いきましょ」「うん」
今日2人でショッピングモールへ来たのにはわけがあった。
かんきつがかまぼこの手を引く。
クリスマス真近で賑わう人混みを縫って歩く。
「このあいだ桐ちゃんと遊びに来た時に可愛いお店を見つけたんです。そこに行きましょう。ドライフラワー、作ってくれるんです。自分でお花を選べるんですよ。その時は私お金あんまり持ってなくて作れなかったんですけど、ひまわりのドライフラワーってセピア色で、あっ!ここですかまぼこー」
かんきつの声が弾む。
ショッピングモールの、エスカレーターの正面に位置する店だった。
かまぼこは今まで意識して見たこともなかった、簡単に言えばとても女受けしそうな店。
木のツタを編んで作られた看板に、南天の実がたっぷり添えられている。
「こんなとこあったんだ、へー」
暖色の照明の店内はほんのりと花の香りが漂い、壁に取り付けられた棚にはガラスの小瓶や押し花の額が飾られている。
かんきつが言うにはそのどれもがれっきとした売り物なのだという。
かまぼこがのんびりと棚を眺める間に、かんきつはもう店員を捕まえていた。
「ドライフラワーのリースを作って欲しいんです。あの、お花って選べます?」
カウンターに少し背伸びして身を乗り出すかんきつに、店員はパンフレットのようなものを広げて見せた。
使う花の種類や量、作るものによって値段が変わるらしい。
店内にある花はもちろん、必要ならば取り寄せることもできるのだとか。

かんきつはあらかじめ目星をつけていたらしい花をすぐさまあれこれ指差している。

店員は頷きカウンターから出て花を集め始め、かんきつはとことことかまぼこのもとへ戻ってきた。
「決まった?」
「決まりました。最初から決めてたんです。30分くらいかかるそうなので、お茶でも行きましょう」
「…」今日はえらく、張り切ってるなぁ。

***

数十分後店に戻ると、まだ店員は花の茎を切り揃えていた。しかし最後の段階だったらしく、かまぼことかんきつの姿を見つけるとすぐにテキパキと商品を整えはじめた。

「お客様、こちらになります。いかがでしょうか」
店員に見せられたリースは小ぶりなひまわりがみっつ中央に添えられたものだった。
木のツタを幾重にも編んだ枝に、かまぼこが名前を知らない花やきのみが彩られている。
全体的に茶色っぽいそのリースを見て、かまぼこはただパッとしないなと思った。
しかしそこに、店員の手がふわりと薄手のフリルを被せた。
幅の広いリボンを上部に巻きつけ、後面を垂らす。
「こういった形でしたら、ご希望のウェディングオーナメントにもぴったりかと思います」
かんきつの目が輝いた。
「ありがとうございます!とっても素敵です!ね、かまぼこ!」
きらきらの瞳がくりくりとこちらを向くけれど、かまぼこはよくわからない。
いいと言われればいいし、地味と言われれば地味だ。ちょっとアクセントが欲しい。
「うーん、と…あ。これとか」
作業台の上に転がっていた熟れていない青いきのみをフリルの左に二つ添える。
「こんなのの方が、俺的には結構…」
「それも!素敵です!」
かんきつは相変わらず嬉しそうだ。
「ではこちらでよろしいですか?」
「はい!」
かまぼこが思い付きで添えたきのみもしっかり固定され、リースは白い紙に包まれて行く。
「よかったです、とても素敵なものが作れました」
「そうだね」
「かまぼこはセンスがいいですね。見直しました!」
「そっか」
はしゃぎっぱなしのかんきつの頭を撫で、そのまま小さな手を取る。

包まれたリースを受け取って、2人は帰路についた。


****

「これ、2人でアイデア出して作ったんです!」
意気揚々と掲げられた包みを受け取った四万十はきょとんとして、隣の信濃川を見た。
信濃川の方も頭の上の大きな触覚をふわふわ漂わせ首を傾げている。
「誕生日プレゼントかな?」
「誕生日じゃないでしょ四万十さん…」
四万十の指がテープを剥がす。
「あ!」
「あ、リースだ」
かまぼことかんきつがアイデアを出し合い完成した秋色のリース。
ふんわりとしたフリルは、まるで花嫁のベールのよう。
「四万十さん、信濃川さん!」
かんきつはリースが出来上がってから今までずっと、浮かれっぱなしだった。
「ご結婚おめでとうございます!」

それは、結婚式をしないと決めた2人への贈り物だった。
指輪を買うことができないと嘆いた2人への贈り物だった。
ずっと飾っておけるようドライフラワーのリースを選んだ。
いつも優しい穏やかな四万十をイメージして、小ぶりのひまわりを選んだ。
彼女の指先から描かれる多彩な色を表したくて、赤い葉やきのみを選んだ。
なんでも包み込み受け止めてくれる信濃川をイメージして、濃い茶色のきのみを赤い葉のすぐそばにあしらった。
「2人のこと考えて、お花とか…葉っぱとか…選んだんです!お店のお姉さんが作ってくれたんですけど、よくできてますよね!」
「かんきつちゃん…」
四万十の目に涙が浮かんだ。
がばりとかんきつを抱きしめる。
「ありがとう!私すごく…、すごく嬉しい…!」

「かまぼこさんもやってくれたんですか、これ」
「この緑のやつ俺が選んだ」
「これは、なんです?なんのイメージですか?」
「えっ、と…まぁ、…四万十の目の色…とか?」
「…ありがとうございます…本当に嬉しいです…!2人でずっと…、大切にしていきますね」
微笑んだ信濃川の目にも涙が浮かんだ。
少しかまぼこの鼻が熱くなる。
「いいってことよ」
がしりと信濃川の頭を掴み、揺さぶるように撫で無理矢理俯かせた。



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